冠動脈の動脈硬化に亀裂ができその部分に急に血栓で閉塞します。亀裂が入る動脈硬化は高度の狭窄部分ではなくむしろ中程度の狭窄部分に多い。むしろ問題は脂質成分の多い動脈硬化で亀裂がはいりやすいことです。
時に心室細動(不整脈参照)と言う不整脈で心臓が急に止まります。
心筋梗塞の一番の怖さは心室細動です。心筋梗塞発症早期におこります。数分以内に電気ショックをしないと救命できません。したがって心筋梗塞を疑う症状を自覚したら直ちに救急車を呼んで心臓専門病院に診てもらうことが重要です。
特徴的な心電図波形:心臓に必要な血液がおくられないと典型的な心電図波形の変化がみられます。
心臓に必要な血液が送られないと心臓の動きが悪くなります。それを超音波検査で判定します。心電図より精度の高い検査です。
心筋は供給される血液がたらない状態が持続すると壊死してしまいます。心筋梗塞では冠動脈の中にできた血栓の切れ端が先の細い血管につまり小さな心筋壊死が生じます。この検査が陽性の場合は約90%の確率で心筋梗塞を発病しています。
直ちに病院へ搬送しカテーテルで血管の詰まりを通してもらいます。できるだけ早く血流を再開させることが短期的および長期的な予後を改善します。1分でも早い再開通が重要です。そのためには症状より心筋梗塞の可能性を見極め、直ちに救急車を呼び治療をうけることを勧めます。
冠動脈が狭くなると血液の流れが制限をうけます。必要な血液が流れてこないとき胸が苦しくなる病気です。狭窄は動脈硬化のみで細くなっている場合と動脈硬化と血栓で細くなっている場合があります。血栓の場合は心筋梗塞を発病する危険性が高いとされています。
狭心症は心臓に必要な酸素を送れないために生じる虚血状態で胸痛を自覚する病気です。したがって狭心症の診断はこの胸痛の伴う虚血状態を確認することが重要です。
虚血状態は心電図か心エコーで判定します。心エコー法のほうが精度が高い検査です。重篤な不安定狭心症では安静時検査においても虚血所見が認められ診断できることがありますが、労作性狭心症では安静時に虚血所見は認めません。そこで運動もしくは薬剤で心臓に負荷をかけて検査をします。
負荷時心臓は安静時より酸素を必要とし正常冠動脈の中は最大3~5倍まで血液の流れが増えるようになっています。しかし狭窄があると血流の増加に制限をうけ、負荷時には狭窄血管における最大血流(通常安静時の2倍以下)で運ばれる酸素量より多くの酸素を心臓が必要とするため虚血状態が生じます。このとき検査でこの虚血状態による異常所見が確認されます。
このような狭心症の診断方法を機能的診断方法と言います。この検査中には実際に自覚している症状と同じ胸痛を誘発できさらに症状の診断が確実となります。もちろん胸痛は検査終了時には消失します。これらの方法での狭心症の診断率は70-90%です。
全ての検査画像は大きなディスプレイで説明いたします。他院でしていただいた検査も了解いただければ当院のコンピューターにデータを取り込み保存し結果の説明をいたします。治療方針についても当院で十分時間をかけ相談させていただきます。
大きな考え方としては症状をとり生活の質を改善(活動性の向上)することと生命予後つまり寿命を延ばすことです。それぞれの治療において期待できる短期的および長期的効果、危険性は異なります。狭心症の治療にはこの3方法があります。
手術は狭窄の先の血管に他の血管主に胸の動脈か足の静脈をつなぎ血液のながれのバイパスをつくります。カテーテル治療は狭窄部にステントという金属の網でできた筒を風船で押し広げ狭窄を解除します。お薬は心臓の負担を少なくする薬、冠動脈を少し拡張させる薬、血圧を下げる薬、コレステロールを下げる薬、血を固まりにくくする薬などがあります。
これらの治療法の中から重症度、合併症などを考慮して最適と思われる治療法を説明いたします。患者様と一緒に相談し最終的には患者様自身が決定されるべきと考えています。
そのほかに胸痛を訴えられる疾患で直ちに命に関わる疾患が急性大動脈解離と肺塞栓症です。急性大動脈解離は大動脈の壁が引き裂かれその引き裂かれた隙間(偽腔)に血液が流入していき胸から足の方向に亀裂(解離)が進んでいく病気です。
前駆症状を伴わずに、突然切り裂かれるような、または引き裂かれるような激烈、かつ鋭い痛みを感じます。解離の進行とともに背部、腰部、さらにはまれに下肢に痛みが移動します。短時間に痛みが最高に達する傾向が強く、症状は長時間持続します。解離した壁は弱く破裂することがありその場合は急死に至ります。
多くは高血圧が発病と関係しており急速に血圧を下げる必要があります。その後解離の場所や血管のふくらみ(大動脈瘤とよぶ)や重要臓器(心臓、脳、腎臓、腸など)への血流の障害などを評価し手術時期が決められます。薬物のみで治療する場合もあります。
肺塞栓症は下肢の静脈の中にできた血の固まり(血栓)が血流にのってながされてきて肺の動脈につまる病気です。大量の肺塞栓は、急性心筋梗塞を思わす胸骨裏面の痛みを生じます。小さい塞栓は、側胸部に痛みを生じます。下肢静脈に血栓ができるのは、手術後や長時間座位(飛行機での移動中)でいるときです。大きな血栓が閉塞すると右の心臓に負担がかかりたちまちショック状態から心停止にまで至ることがあります。重症でも血栓溶解療法や人工心肺装置を使用すれば救命できる病気です。
心電図をとりながら、心拍に合わせて心臓の輪切り画像を放射線撮影する検査です。撮影した輪切りの画像をコンピューターで処理することによって冠動脈の3D画像を作成し、冠動脈の状態を検査します。診断精度は非常に高くなっていますが100%ではありません。この検査の解剖学的情報と負荷検査による機能的情報をあわせてさらに診断精度が上昇します。
血管の拡大つまり大動脈瘤を診断できることがあります。
大動脈の解離腔や下肢静脈にできた血栓を検出できます。
急性大動脈解離
大動脈が解離して二つの腔に別れている。
肺塞栓症
肺動脈のなかの血栓がある場合。
このような場合、直ちに救急車で治療可能な病院へ移って診断していただきます。
胸痛の原因の30%で最も狭心症に似た症状です。
人間の細胞は酸素を使って栄養分を分解し、生きています。その酸素と栄養分は血液によって運ばれているのですが、その血液を全身に送り出すのが心臓の仕事です。なので、心臓はポンプのような機能を持っており、血管がパイプのような働きを持っています。しかし、その心臓も心筋という筋肉細胞でできており、他の細胞と同様に酸素と栄養分が必要です。そのために、心臓の細胞に血液を送り出す血管が存在しており、それを冠動脈といいます。
先ほど述べたように、心臓にも酸素と栄養分を送り出す血管が必要です。もし、その血管が狭くなったり、詰まったりしたらどうなるでしょうか?心筋細胞は十分な酸素と栄養分をうけとれなくなり、機能が低下し、最悪細胞が死んでしまう事もあります。そうなると、全身に上手く血液を運ぶ事が出来なくなり、全身に障害が起きます。
このように、血管が狭くなったり、詰まったりしてしまうことを狭窄、閉塞といい、それによって起こる心臓の障害を、狭心症、心筋梗塞といいます。では、なぜ血管が狭くなったり詰まったりするのでしょうか?これには、動脈硬化が関係しています。血管の内皮(血液にふれている一番内側の細胞の膜)に障害が生じると血液の中を流れているコレステロールが内皮の下にしみこみ蓄積していきます。やがてコレステロールのたまりは大きき成り血管の中に飛び出したコブ(粥腫)を作ります。これが動脈硬化であり、この動脈硬化は血管内を狭くし、またそれほど血管がせまくなくても粥腫の表面に亀裂がはいると血管のなかで血液が固まり血管を詰まらせたりします。 病状によって以下の病気の種類があります。
冠動脈の粥腫の表面に傷が入り、急に血栓(=血のかたまり)ができ、冠動脈の血流が悪くなる病気です。この中で一番重篤な急性心筋梗塞とは、冠動脈が突然閉塞し(図2の血栓性閉塞)、この結果心臓への酸素と栄養の供給が無くなってしまうために心臓の筋肉細胞が死んでしまう病気です。急性心筋梗塞の時には多くの場合、激しい胸の痛みを感じます。また、痛みだけでなく、突然心臓が止まってしまうような不整脈が起こったり、またポンプとしての働きが極端に低下し体に必要な血液が送れなくなってしまったり(ショック)、時には心臓が破裂してしまうこともあります。
この結果、急性心筋梗塞を起こした場合には、急死する危険性があります。速やかに適切な治療をすぐに受けないと、死亡率は30%以上あると言われ、また病院外で急死される方も少なくありません。すぐに適切な治療を受けることにより、死亡率を10%以下に低下させることが出来ます。しかしながら、急性心筋梗塞を再発した場合には、死亡率は約50%とも言われています。また、心筋が死ぬのをできるだけ抑える、つまり後遺症を最小限にするためには、できるだけ早くに(少なくとも発病12時間以内)閉塞した血管を再開通させる必要もあります。
このような急性心筋梗塞と同じ機序で急に発作が生じる不安定狭心症という病気があります。この病気は血栓で血流が悪いが閉塞していない状態(図2の血栓性狭窄)です。症状は15分以内におさまりますが、この病気から心筋梗塞へ移行する率は高いので(5~35%)、発病から数日以内の治療を重要です。
心筋梗塞にかかると、大多数の患者様では典型的な症状がみられます。最も多いのは胸痛です。それも強い圧迫感、締めつけ感、あるいは燃えるような灼熱感などと表現されます。胸痛を感じる部位は通常は胸の左側から中央にかけての一定の広がりのある部位で、しばしば首の付け根から左肩、または左の腕に伝わります(図4)。
胸痛は通常30分以上数時間にわたり持続し、冷や汗や吐き気、息苦しさを伴って患者様は死ぬのではないかという恐怖にとらわれるのが特徴です。ただし、痛みにはいろいろな程度があり、まれながら苦しみが軽いため本人はそれが心臓に由来するとは気づかないこともあります。一方、苦しみが胸ではなく、上腹部(胃の辺り)が痛むことから、間違って胃のレントゲン検査や胃カメラの検査を受けたり、あごから歯の周囲が痛んで、虫歯と思い、歯科医を訪れたが異常がなく、たまたま内科で心電図をとって初めて心筋梗塞と診断されたりするケースさえあります。
心筋梗塞の前兆と考えられるのは狭心症ですが、この狭心症が心筋梗塞の発症前にあったヒトは全体の約60%にすぎません。たとえ前兆があっても、胸焼け程度に考えて、前兆を見過ごすこともあります。加えて残りの約40%には前兆となる症状が全くないのですから、心筋梗塞を予想するのは事実上大変難しいことになります。
急性心筋梗塞で救命された後も、壊死した心臓の部分は回復しません(陳旧性心筋梗塞)。広範囲の壊死を生じた時は、壊死していない部分も負担がかかり次第に弱っていき、心臓の血液を送り出すポンプ機能はさらに低下します。このような状態を、虚血性心筋症といいます。特に非梗塞部に血流を送っている血管に狭窄がある場合このような病気にいたる危険性は高まります。
また、冠動脈は主に3本の枝に分かれますが、その枝の複数枝に高度狭窄があると慢性的に血流不足で心筋は働かなくなります(これを冬眠心筋という)。このような冬眠心筋による慢性心不全を虚血性心不全といいます。虚血性心筋症や虚血性心不全になると5年生存率は50%程度になります。また心不全による症状も強く生活活動能力は非常に低下します。治療に関しては、薬物治療より明らかに血の流れを回復させる冠動脈形成術かバイパス手術による治療が優ります。
心電図検査では胸痛が起きてから30分を経過するとSTという部分が上方に移動し(ST上昇)、数時間すると脈の波形の最初の部分が下向きになります(異常Q波)(図5)。この変化がでれば心筋梗塞が心電図で確認されたことになります。ただここで注意すべき点は、胸の痛みが起きて30分以内の非常に早い時期では心電図は一見正常に見えることがあるので、その場合は1回心電図をとっただけでは安心できません。時間をおいて繰り返しとる必要があります。
心筋梗塞では心臓の筋肉の一部が死ぬと、心筋細胞中に含まれる物質が血液の中に漏れてきます。そこで血液を検査すると、本来は血液中にわずかしか含まれていない物質(CK、GOT、トロポニン、ミオシン軽鎖など)が時間とともに増えてきます。この異常所見により心筋梗塞が診断されます。心エコー検査では心筋の虚血部位の動きが悪くなり心筋梗塞が診断されます。また、心筋梗塞の合併症である心破裂(壊死した壁に穴が開く)が診断されます。
心電図をはったままで日常生活をしてもらいます。その間のまる一日の心電図を記録します。装着中に胸痛が生じればその時の心電図が残り、あとでその時の心電図を解析します。また、症状がなくても心筋虚血を疑わす心電図変化が記録される場合もあります。この場合を無症候性心筋虚血と診断します。
冠動脈の中を流れる血液は、運動時に増量します。これは運動時には体中にたくさんの血液を送る必要がありこのときは心臓の働きも増えるため多くの酸素を必要とし、心臓の中の細い血管を広げることにより冠動脈に血液が流れやすくして血流量を増やします。
冠動脈CTとはマルチスライスCTという新しいCT装置を用いて造影剤を静脈から注入しながら心臓を撮影し、結果をコンピュータ処理後冠動脈部分の画像を再構築する方法です。利点は、冠動脈内腔の太さが大体わかることです。欠点は、冠動脈壁に石灰化(非常に血管が硬くなり骨と同じ成分・カルシウム塩が沈着すること)や金属のステントなどがあるところではどうしてもCT画像の判定が難しくなることです。また脈が速すぎる人や、不整脈の多い人は検査が上手く行かないため、脈を整える薬剤が投薬されます。不整脈等の病状によっては検査を出来ないこともありえます。
まず、患者様の(右・左)大腿動脈、または(右・左)上腕動脈、または(右・左)橈骨とうこつ動脈を局部麻酔した上で針を刺し(穿刺)、カテーテルという柔らかくて細い管(直径1~3mm程度)を血管内に挿入します(図3)。稀に、血管の屈曲、攣縮によりカテーテルを推し進めることができないことがあります。その場合はカテーテル挿入部位を変更させていただきます。
カテーテルを細くて屈曲性のある導入ワイヤーをレールにして押し進め冠動脈の入り口にカテーテルの先端部を挿入し、造影剤という薬剤をカテーテルから流し、X線透視撮影を行うことにより、冠動脈血管内腔を造影し、狭窄・閉塞を調べます。
また、冠攣縮性狭心症が疑われる場合はエルゴノビンという薬剤を冠動脈に注入することにより、冠動脈の痙攣を誘発する検査を行います。冠攣縮が誘発された場合、いつもの発作と同様の胸痛を自覚されることになります。この時稀に重篤な不整脈が発生し、電気ショックや電極カテーテルで電気刺激することがあります。病気の無い方には攣縮は誘発されません。
心臓の機能の悪い方には、大腿の静脈からカテーテルを挿入し、下大静脈、右心房、右心室、肺動脈の順番にカテーテルを進め、心拍出量、肺動脈圧、右心内圧を測定します。また心筋症、心筋炎が疑われる方には、首の静脈から鉗子カテーテルを挿入し右心室より心筋を採取します。これらの検査により、今後の治療方針を決める上で重要な情報が得られます。
これら治療法の選択には、個々の患者様の
などの合併症の有無などが考慮されます。
治療には胸痛発作の寛解(治ること)と予防があります。発作の寛解のためには通常はニトログリセリンやニトロールの錠剤を口の中で溶かす舌下投与が行われます。また口の中に噴霧するかたちのスプレー製剤もあります。これらの硝酸薬は全身の血管を拡げて血圧を下げ、心臓の仕事を楽にすると同時に、冠動脈を拡張して心臓の筋肉に行く血液の循環を良くする作用があります。1~2分で効果が現れ、苦しみの和らぐのが普通です。発作の起こるのが予測できる場合には、その直前にニトログリセリンなどをなめることで予防ができますが、欠点は効果の持続がせいぜい15~20分程度と短いことです。
発作の予防には効果の持続がより長い薬が便利です。口から飲むニトロールの徐放剤、長時間作用型硝酸薬、皮膚から吸収させるニトログリセリンやニトロールのテープなどの貼付剤があります。また、全身の血管や冠動脈を拡げる作用の強いCa(カルシウム)拮抗薬や血圧を下げ心臓の仕事を抑えて狭心症を予防するβ(ベーター)遮断薬があります。
狭心症の患者様が心筋梗塞になるのを予防する効果が確認されている薬には、β遮断薬やアスピリン、コレステロールが高いなどの高脂血症の治療薬であるスタチン薬があります。アスピリンは頭痛や熱の薬として有名ですが、少量を用いると動脈硬化を予防・治療する効果が確認されています。
この検査は、次のような手順で行われます。まず、患者様の(右・左)大腿動脈、(右・左)上腕動脈、(右・左)橈骨とうこつ動脈を局部麻酔した上で針を刺し(穿刺)、カテーテルという柔らかくて細い管(直径1~3mm程度)を血管内に挿入します(図3)。
稀に、血管の屈曲、攣縮によりカテーテルを押し進めることができないことがあります。その場合はカテーテル挿入部位を変更する必要があります。次にカテーテルを冠動脈の入り口まで進め、造影剤という薬剤を流し、X線透視撮影を行うことにより、冠動脈の狭窄・閉塞部位を確認します。ついでカテーテルの内腔より導入ワイヤーを押し進めて、ワイヤーの先端を冠動脈入口部より狭窄もしくは閉塞病変を越えて心尖部(心臓の先端)まですすめます。そして、以下のいずれかの方法で狭窄もしくは閉塞した血管の内腔を拡張します。
まず心筋梗塞を考える前に知っておかなければならないのは、心筋細胞は皮膚の細胞などとは違い、一度死んだら再生しないという事です。なので、心筋梗塞は危険な病気で、約30%の人が死亡しますが、そのうち約半数のかたは発病後4~5時間以内に亡くなっています。その原因は一次性心室細動といい、虚血が引き金となって起こります。心室細動とは、心筋が痙攣を起こしたみたいにビクビクし、しっかりと全身に血液を送れなくなってしまう不整脈で、大変危険です。除細動までの時間が1分経過する毎に救命率が7~10%低下するため、蘇生成功には居合わせた人の心肺蘇生と自動体外式除細動器(automated external defibrillation; AED)による現場での除細動が必須です。
心筋梗塞にかかった人の退院後の死亡の危険性は、発病から1年ぐらいの間に急激に減少しますが、それでも長期の生存率は一般の人と比べると低くなります。生存率は年齢で異なりますし、最近の治療の進歩により、予後は改善しつつあります。京都・滋賀地域の調査では、5年間の死亡率8%(生存率92%)、死亡・心筋梗塞の再発・冠動脈血行再建手術を受けるいずれかの心事故発生率は35%と報告されています。心筋梗塞の予後に影響を与える最大の因子は、心筋梗塞の大きさです。
この心筋梗塞の大きさを変える一番重要なことは閉塞した血管をできるだけ早く再開通させることです。心筋梗塞は時間とともに壊死する範囲が広がっていきます。より早く詰まった血管を再び開通させ、血流を確保することは、壊死する心筋を減らすことができ、結果、長期予後の改善につながるのです。したがってより早く専門の病院に収容されるかも重要な要素です。つまり心筋梗塞を疑うような強い胸痛を自覚したら、直ちに救急車でカテーテル治療のできる病院には搬送してもらうのが賢明です。
救急車が必要である理由には、AEDを搭載しており心室細動に対応できること、心臓に負担をかけずに最短時間で病院へいけるなどがあげられます。当院で連携している病院は全て緊急カテーテル治療に対応しています。参考にしてください。
心臓の病気について述べてきましたが、少しでも思い当たるところがある、よくわからなかったのでもっと詳しく聞きたい、など思われた方は是非当院までお越しください。
迅速かつ詳細な診断
緻密な生活指導
適切な薬物治療
高度医療の適応評価と連携病院への紹介
緻密な経過観察
豊富な経験
以上であなたの心不全を治療いたします。
一方、体循環は、心臓と脳・筋肉・肝臓などの全身の臓器間をつなぐルートで、酸素や栄養素を含んだ血液を全身へ届け、各臓器からは二酸化炭素や老廃物を受け取り戻ってきます。血液は心臓の左側から全身に動脈を通じて送り込まれ酸素を全身の細胞に渡します。酸素が減った血液は静脈を通じて右の心臓に戻ります。心臓の右側から肺へ送り込まれ酸素を取り込み心臓の左側に戻る。つまり心臓は肺と全身から血液をもどし全身と肺に血液を送り込むポンプの働きをしているのです。
心不全になると、心臓は体に必要な酸素や栄養分を与えるのに十分な量の血液を送り出せなくなります。その結果、脚や腕の筋肉は疲れやすくなり、手足の冷感も自覚されます。また、動くと直ぐに心拍数が上昇し、走った後のような動悸も自覚します。
血管のなかの血液のうっ滞がひどくなると、血管の中から外に水分がでてしまい、組織に水がたまります。これを浮腫と言います。とくに下肢や肺にたまります。水がたまる場所は、余分な体液の量と重力のかかり方によって異なります。立っている場合は、足に水がたまります。あお向けに寝ている場合は、普通は背中の下部にたまります。体液の量が多い場合、腹部にもたまります。肝臓や胃に体液がたまると、吐き気や食欲不振が生じます。
最終的には、食べたものが十分に吸収されず、体重が減り、筋肉が衰えます。この状態を心臓性悪液質といいます。左側心不全では、肺の内部に体液がたまり、息切れが起こります。最初、息切れが生じるのは運動中だけですが、心不全が悪化するにつれて、より軽い運動でも息切れが生じ、ついには安静時にも息切れが起こるようになります。重い左側心不全の人は、横になっていても息切れがすることがありますが、これは重力によってより多くの体液が肺の内部に移動するためです。
そのため、患者様はよく起き上がり、あえいだり喘鳴(ぜんめい)がみられます。これを発作性夜間呼吸困難といいます。座ることで体液の一部が肺の底部に流れ出るため、呼吸は楽になります。最終的には、左側心不全によって右側心不全が起こります。肺の中に大量の体液が急にたまることを急性肺水腫といい、ひどい呼吸困難、速い呼吸、青白い皮膚、気分が落ち着かない、不安感、窒息などが起こります。人によっては、気管支けいれんや喘鳴がみられることがあり、この状態を心臓喘息(しんぞうぜんそく)といいます。喘息とよく似た症状ですが、原因はまったく異なります。急性肺浮腫は命にかかわる緊急性の高い病気です。
心室機能不全により、患者様は日常生活における一般的な活動を遂行する能力が制約されます・・・我々の心臓をこのロバに、我々の身体をこのロバが毎日引かなければならない荷車に例えてみましょう。
健康な心臓は元気旺盛なロバと同様、荷物を満載した荷車を疲労することなく引いています。逆に、心臓が病気になると、生活機能による要求を満たす(荷車を引っ張る)ことが困難になります。
心拍数です。つまり心臓が働いている回数です。心臓は驚くべき多くの回数仕事をしています。また、1分間に心臓から送り出される血液量はおおよそ平均5リットルです。この量を動脈の中の圧力、つまり血圧以上の圧力で送り出しています。もちろん体を動かしているときや興奮しているときはさらに多くの血液を送っています。このとき血圧も上昇しており心臓の負担はさらに大きくなっています。
慢性心不全は、さまざまな原因で心臓の機能が低下した状態です。心臓の機能を低下させる原因となる基礎疾患には、高血圧、心筋梗塞、心筋症、弁膜症、先天性心疾患、不整脈などがあります。頻度は順に高血圧35%、心筋梗塞30%、弁膜症26%、心筋症15%、その他12%、不明5%と報告されています。
高血圧は、血圧が高くなり心臓に負担がかかります。心筋梗塞は心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈の血管が閉塞して、筋肉の働きが低下します。心筋症は原因不明で心臓の筋肉の働きが低下します。弁膜症は、心臓の血流を仕切る弁の働きが悪くなり、血液が逆流してり流れにくくなったりします。不整脈は、心房細動などが長期間持続することによって心臓機能を低下させます。先天性心疾患は心臓やその周りの血管の生まれつきの異常により、心臓の機能が低下します。
体には心不全に対応する代償機構が数多く備わっています。心不全を含めた負荷に対する体の最初の反応は、「攻撃‐逃避」ホルモンであるエピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の放出です。たとえば、心臓発作で心筋が損傷すると、これらのホルモンがただちに放出されます。エピネフリンもノルエピネフリンも心臓を速く強く拍動させ、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)をときには正常な量にまで増やすことで、低下した心機能を部分的にかつ一時的に補います。つまり、心臓にむちを打つイメージです。心疾患のない人では、短期的に心機能を高める際などにこれらのホルモン放出が役立ちます。しかし、慢性心不全の人では、こうした反応は、すでに損傷している心臓の負担をさらに増やし、時間の経過とともに、心機能の低下を引き起こします。
心不全に対するもうひとつの主な代償機構は、腎臓での塩分と水分の排泄量を減らすことです。塩分と水分を尿中に排泄する代わりに保持することで、血流量が増え、血圧を維持するのに役立ちます。また、血液量が増加すると心筋が伸びて、心房と心室、特に心臓から血液を送り出す心室が拡大します。心筋は伸びるにつれて、いっそう力強く収縮します。最初、この代償機構は心機能を改善しますが、ある限界を超えると、伸びすぎた輪ゴムのように、伸長はもはや心臓の収縮を助けることはなく、心臓の収縮力は弱まります。その結果、心不全は悪化します。
また、これらのホルモンは血管を収縮する作用があります。心臓が弱って拍出される血液量が減ると血圧は下がってしまいます。血圧は血液が体のすみずみまで流れていくための原動力になるので、これが下がってしまわないように血管を収縮させて血圧を上昇させます。この状態が持続すると、次第に血圧は正常より高くなることがあり結果的に心臓に負担をかけてしまいます。
さらに異なる重要な代償機構は、心室の筋肉の壁を厚くする心室肥大です。心臓が激しく働くと、心臓の壁は数ヶ月間ウエイトトレーニングをした後の上腕二頭筋のように肥大し、厚くなります。最初、心臓の壁が厚くなったために心臓はより力強く収縮できるようになります。
しかしこの心筋細胞にさきほど説明した代償ホルモンが負担を増やすと心筋細胞は疲弊していきます。心臓は1日10万回も血液を拍出するような重労働をしているのですから、疲れがたまることは当然のように思われます。細胞の老化現象が進むような感じで、最終的に自爆遺伝子のスイッチが入り死滅する細胞が出現します。このような形で慢性心不全の心臓は知らないうちに少しづつ心筋細胞が脱落し心機能を悪化させていきます。
心臓は心臓に障害が発生すると形状や容量を変化させます。これは障害に対する代償機序です。例えば、高血圧症では血圧上昇で血液を送り出すのに心臓に負担がかかります。これに対応するため心筋細胞は肥大します。このとき心臓は膨らみにくくなり、拡張不全になります。さらに負担がたまると心臓は拡張し始めます。その他の原因基礎疾患では心臓が次第に拡大することで心機能を維持しています。
熟練した心臓内科医は身体所見で多くの病状に関する情報を得ることができます。患者様を見ることが疾患を疑う最初の情報得る重要な技術です。さらに聴診器は多くの情報を与えてくれます。例えば、
などです。これらのことから必要な検査計画が立てられます。さらに何度も詳しい検査をしなくても病状の変化を知ることができます。
心不全が重症となると肺に水がたまります。これを肺水腫と言います。この肺水腫を診断できるのは胸部レントゲンのみです。したがって心不全の診断において極めて重要となります。
運動負荷検査は狭心症の診断にはかかせない検査方法です(詳しくは胸痛)。また、運動できる能力を客観的に評価するために運動負荷試験を行うこともあります。この方法で得られた運動能力は、下肢筋力の低下を差し引けば心臓の機能を評価していることになります。簡単に言えば、悪い心臓ほど運動すれば直ぐに疲れるわけです。この考え方で心不全の重症度を4段階に分けて表現することがあります(NYHA心機能分類右下図)。この段階評価は弁膜症の心臓手術の適応を決める基準になります。
心臓はみずから自分を守るホルモンを分泌します。さきほどの代償ホルモンが分泌され循環血液量の増加され心臓が大きくなると心筋細胞は引き伸ばされます。このことが刺激になり心筋細胞自身から分泌されます。このホルモンは尿の量を増やしたり代償ホルモンから心筋細胞を守る働きを持ちます。このホルモンは心臓への負担が大きくなればなるほどたくさん作られます。したがってこのホルモンと心不全の診断や重症度や予後との関係についての多くの報告が、わが国の研究者を中心に行われてきました。またこのホルモンの同類の心房性ナトリウム利尿ペプチドは合成できるようになり心不全の治療薬となっています。
慢性心不全では、重症度に応じた治療が行われます。
治療法には大きく「薬物療法」「医療機器の使用」「手術療法」の3つがあります。薬物療法が基本ですが、必要に応じて医療機器の使用や手術も行います。また、生活習慣の改善や適切な服薬の継続など、患者様による日常生活の管理も治療には重要です。
肥満で心不全を合併する人が運動すると、運動中は心臓にさらに負担がかかるため、心不全が悪化します。このような人では減量のための食事療法が必要です。
喫煙は血管を傷つけ、心臓発作の危険性を高めます。大量のアルコールは心臓に直接悪影響を与えます。したがって、喫煙と飲酒は心不全を悪化させるのでやめるべきです。
運動、減量、禁煙は、冠動脈疾患のリスクを減らすだけでなく、糖尿病の調節に役立ち、コレステロール値も低下させます。
塩分の多い食事は口渇を自覚し必ず水分摂取量を増えます。また、体液の塩分がおおくなると腎臓からの水分排泄は低下します。結果体液量が増加し、体液がたまってしまいます。したがって、塩分の過剰摂取は症状を悪化させます。心不全の人はほぼすべて、食卓塩や塩辛い食べもの、調理の際の食塩の使用を制限する必要があります。加工食品に含まれる塩分量はラベルを読んで確認できます。重い心不全の人は普通、どの程度食塩の摂取を制限するか、詳しく指示されます。食塩の摂取量を制限している人でも、体液がひどくたまっていなければ、普通に水分を取ることはできます。ただ、余分な水分は取らない方がよいでしょう。
体にたまった体液を調べる、簡単で信頼性の高い方法は、毎日体重を測ることです。心不全の人は毎日、できるだけ正確に体重を測るよう医師に指示されます。典型的には、朝起きて排尿した後、朝食の前に測定します。毎日同じ時間に同じ体重計を使い、同じような重さの服を着て体重を測り、毎日の体重を記録すれば、体重の変化の傾向を簡単に把握できます。1日あたり約1キログラム以上の体重増加は、体液の貯留を示す早期の警告です。1日あたり約1キログラムといった一定した急激な体重増加は、心不全の悪化を示します。
荷車の荷袋の数を減らす。
利尿剤
食塩の制限だけでは貯留した体液を減らせない場合、利尿薬が使われます。利尿薬は、尿量を増やすことで、腎臓が塩分や水分を排出するのを促し、全身の体液量が減らします。利尿薬には尿中にカリウムを排出させる作用があるものとカリウムの濃度を上昇させるカリウム保持性利尿薬と併用することがあります。カリウム保持性利尿薬は、治療効果のエビデンスがあります。
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
心不全の治療の根幹を成す薬です。ACE阻害薬は症状を軽減し、入院期間を短縮するだけではなく、寿命を延ばします。ACE阻害薬は、正常な血圧の上昇にかかわるホルモンであるアンジオテンシンIIとアルドステロン(血圧の調節:レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系を参照)の血中濃度を低下させます。これによってACE阻害薬は動脈と静脈を拡張させ、腎臓の水分排泄を促進し、心臓にかかる負担を減らします。また、ホルモンによる心筋の病的変化を防ぎます。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬
ACE阻害薬と似た作用があります。アンジオテンシンII受容体拮抗薬はACE阻害薬と併用する場合もありますが、副作用のせきのためにACE阻害薬を使用できない一部の人に対しては、単独で使用される場合もあります。しかし、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の心不全の治療における有効性は、まだ評価中の段階です。
ロバのスピードを制限する。
心臓に対する交感神経の作用を抑える薬です。心臓の働きを穏やかにすることで心筋を保護し、症状を改善します。
ロバの前につり下げられたニンジンと同じ働き
最も以前から使われている心不全の治療薬の1つで、心拍出力を強め、速くなりすぎている心拍を遅くします。ジゴキシンは、特に心房細動がみられる収縮期機能不全を起こしている人の症状を和らげます。
薬の飲み忘れや自己判断での中止は、心不全の急激な悪化の原因になります。
適切な運動すると以下のことが期待されます。
ただし重症度や症状によって運動制限が必要な場合もあるため、心臓リハビリ施設で医師や運動療法士の指導のもと行う必要があります。
ロバ(心臓)の効率を上げる。
心臓は電気信号が伝わって筋肉が縮む。
電気信号の伝達は専用伝達路があり素早く心臓全体に伝わっている。
悪い心臓では伝達路が傷み遅れて信号が伝わるところがある。
結果、心臓の壁の動きは部分的にタイミングがずれ有効的に血液を送り出せなくなる。
ペースメーカーから電気信号を送り込み心臓全体の収縮のタイミングを合わします。
この方法で血液の送り出しがよくなります。
患者様や家族が日頃から心不全の症状を理解しておくと症状の変化から心不全悪化の兆候を早期に発見することができ、早期治療につながります。
色々な検査結果で総合診断し、必要な治療を説明します。
手術治療は連携病院にご紹介いたします。
洞結節(左図ミドリ部分)から電気信号は規則正しく発生しています。この信号のリズムは脳からの命令で早くなったり遅くなったりしています。この脳からの命令は自律神経から伝わってきます。従って人それぞれに安静時の心拍数は異なります。また体を動かしたり、興奮したり、緊張したりしただけで心拍数は変化します。
信号が心臓に伝わる繊維は左図色のついた部分です。緑→水色→青→紫の順に信号は伝わります。この電気の流れを体の表面から記録したのが心電図です。色のついた部分で発生した電気信号に対応した波が記録されます。したがって心電図波形をみるとどこに信号の異常があるのかだいたいわかります。
心拍のリズムのみだれです。以下のようなみだれかたがあります。
通常はスマイルマークの洞結節から電気信号が伝わっていきますがショックマークで早期に電気信号が発生し予定外の収縮がおこります。この不整脈は連続しない限りは心配ない不整脈であることがほとんどです。
通常は上の図のように洞結節から50~90回/分の回数で電気信号がでています。突然心房が350~600回/分の高頻度で興奮しだすのが心房細動です。このとき心房はプルプル震えているような状態になります。心室への電気信号は房室結節でいくらかブロックされますので心室は正常~速くて150回/分ぐらいで不規則に動きます。このとき突然ドキドキとします。時には早い心臓の拍動を感じ、動くと息切れも感じます。心臓の機能がいつもより低下するからですが、すぐに命にかかわることは極めて稀です。
上が正常時で下が心房細動時です。波と波の間隔が非常に規則正しく、また波と波の間はまっすぐな線になっています。下は心房細動の心電図です。波と波の間隔は不規則で、また波と波の間はこまかくゆれています。これが細動波といいます。
右上のように高齢者になるほどこの合併症の危険性は高くなります。またその他に心臓が力が弱っている(心不全)、高血圧がある、糖尿病がある、以前脳梗塞を発病しているなどの危険因子をもっておられれば心房細動による脳梗塞の危険性が高くなり、血を固まりにくくする薬の服用が勧められています。
また、心房細動は動悸を自覚し医療機関へ受診されることが多いですが、無症状で発病していることもあります。この場合最悪は脳梗塞を発病して心房細動を発見される場合もあります。健診で発見されれば幸運です。ぜひとも健診を受けましょう。
心房で電気信号が右の図のような場所で回旋するため生じる不整脈です。1回電気信号が回旋する度に心室へ電気信号が送られますが、房室結節で何回かに1回しか信号は通過しません。回旋の回数は約260~300回/分ですが、心拍数はその半分以下です。心電図には心房の頻拍によりのこぎりの歯のような波がみられます。この波は1回回旋することにより発生しています。心房細動と異なり心拍は規則正しいのが特徴です。しかし病状は心房細動とほぼ同じです。
心房で電気信号が右の図の場所で回旋するため生じる不整脈です。1回電気信号が回旋する度に心室へ電気信号が送られます。回旋の回数は約120~250回/分です。心電図は規則正しく早い波形が特徴です。
心房と心室の電気信号の通路は通常房室結節しかありませんが、生まれつきKent束(右図:青い筒状)と呼ばれる副伝導路があり、この通路により右図のような電気回旋が生じ頻拍となります。頻拍でないときの心電図でΔ波という特徴的な波形を認め診断されます。
電気信号が発信されない
心房と心室の電気信号の通路は通常房室結節しかありませんが、生まれつきKent束(右図:青い筒状)と呼ばれる副伝導路があり、この通路により右図のような電気回旋が生じ頻拍となります。頻拍でないときの心電図でΔ波という特徴的な波形を認め診断されます。
電気信号の伝達経路の房室結節で電気信号がブロックされてしまう病気です。完全にブロックされる場合と何回かに1回ブロックされる場合があります。完全にブロックされた場合は他の場所で急遽電気信号が送り出されます。しかしこの補充の発電所はゆっくり(30-40台拍/分)にしか電気信号を送りません。結果、洞不全の時と同じ症状が生じます。
早く規則正しいが心拍数が早すぎるため血液を心臓に十分ためることができず心拍出は非常に少なくなります。このため意識を失うことが多く、また最悪心停止に至ることがあります。
多くは、原因となる基礎心疾患があり、心不全が悪化すると発症する危険性が高まります。
心室から高頻度の不規則な電気信号が発生
心室から高頻度の不規則な電気信号が発生し、正常な収縮が行えない状態。
3~4分持続すると、脳に血液が送られず死に至る。心臓突然死の原因の多くを占める。
診療所で12誘導心電図(図1):検診や外来で行われる標準的な心電図検査で、両手首と両足首の4ヵ所と胸に6ヵ所の計10ヵ所に電極を付け、12通りの記録をします。この方法で記録された心電図波形は不整脈の診断を最も確実にします。症状を自覚し持続するようでしたらすぐ医療機関を受診し心電図を記録してもらってください。もしこの時意識が失ったり、呼吸困難、胸痛を自覚したら救急車で受診してください。症状が強い場合は危険な不整脈の可能性があります。夜間でも受診すべきです。
24時間心電図記録(図2):自由行動下で心電図を記録する方法です。できるだけ普通の生活をして不整脈を評価する検査です。より長時間の心電図を記録することは、出現する不整脈をうまく記録できる確率を高めます。一過性の不整脈発作や、日常の動作で現れる不整脈、睡眠中の不整脈などを見つけることができます。自覚症状が起きた時にボタンを押して記録することで自覚症状と不整脈の出現が一致するかを確かめることができます。症状がなくても病的不整脈を診断できる場合もあります。
家庭用携帯心電計(図3):動悸などの自覚症状があるものの、通常の12誘導心電図、また長時間連続記録ができるホルター心電図でも捉えられず発見されない不整脈の診断のために使用します。携帯用小型心電計(イベントレコーダー)は常に持ち歩ける手のひらサイズで、ホルター心電図が24~48時間が限度であるのに対し、自覚症状が出たときにはいつでも心電図を記録することができます。診察時持参してもらい記録された心電図を診断します。また、毎日定期的に記録することで不整脈の診断および治療効果も判定できます。突発的に発症することが多い不整脈の診断に非常に有用と考えます。ただし、機器は個人購入ですので可能な限りの検査方法です。記録された心電図波形は十分診断可能な心電図波形を示していますが、時にノイズも入ることがあり自動解析での診断は不可能です。あくまで医師の診断が必要です。
不整脈以外の心臓病や他の内臓の病気を診断しておくことが不整脈の重症度を判定するうえで重要です。
上記に基礎疾患を考慮して治療の適応を決めます。
不整脈は、日常生活の影響を大きく受けます。治療が必要ない不整脈であっても、日ごろから食事や運動など、生活習慣に気を配ることが大切です。不摂生な生活の人は、規則正しい生活の人より不整脈を起こしやすいことは明らかです。まず生活習慣の修正から不整脈の治療は始まります。
食事と不整脈
不整脈は高血圧をはじめとする生活習慣病と深く関わりがあり、生活習慣病を防ぐための食生活が不整脈から心臓を守ることになります。そのポイントは(1)食塩を取り過ぎない、(2)適正な摂取エネルギー量を守る、(3)栄養をバランスよく摂る、(4)飽和脂肪酸を減らし、その分、不飽和脂肪酸を摂る、(5)食物繊維を摂る、などが挙げられます。さらに食事を抜いたり、夜中に食事することは肥満につながるので規則正しい食生活も大切です。
運動と不整脈
運動が必要な不整脈と制限する不整脈があります。不整脈だから運動に制限があるとは限りません。心不全など心臓の機能低下がある場合は、運動は心拍数を増やし、心臓に負担をかけるので控える必要があります。どの程度の運動ができるかは、専門医から自分にあった運動量を指導してもらいましょう。危険度の高い患者様は心臓リハビリによる監視下での運動が必要です。
ストレスと不整脈
不安や悩みなど精神的なストレスが積み重なることは、自律神経のバランスを崩し不整脈を引き起こしたり、悪化させたりする要因となります。精神的なストレスでは、原因を取り除くことはとても難しいので、上手にストレスを発散したり、乗り越える術を身につけるようにしましょう。適度な運動やストレスの種とは無関係な趣味を持ち、悩みを相談できる親しい友人を作るのもひとつの方法です。
タバコ、お酒と不整脈
タバコは本数に関わらず血管を収縮させ、動脈硬化を引き起し心臓病を引き起こします。また喫煙を契機に狭心症や心筋梗塞を発病し、その結果重篤な不整脈で死に至ることもあります。タバコを止められないのは意志が弱いのではなく依存症のためなので、無理をせずに自分に合った禁煙法を探しましょう。またお酒もほどほどに適量を守らないと高血圧、糖尿病、動脈硬化を引き起こします。一般にアルコールの1日の適量はビールなら中びん1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯が目安です。
入浴と不整脈
日本では「熱めの湯に肩までつかる」入浴法が体に良いという習慣があるようです。心疾患がある場合の心臓に負担をかけない入浴法は、(1)お湯の温度は41℃以下、(2)深くつかりすぎずに半身浴、(3)かけ湯をして体を少しずつ慣らす、(4)長湯をしないことです。
コーヒーと不整脈
コーヒーと病的不整脈の関係はまだ明らかではありません。コーヒーが不整脈をへらす可能性を示した研究発表もありますが、大量カフェイン摂取で重篤な不整脈が発生した報告もあります。少なくとも1日1~4杯ぐらいにはしましょう。
これら不整脈のお薬は心拍が早くなる不整脈・心拍が遅くなる不整脈・脳出血・胃腸の出血などの重篤な副作用が報告されており専門医による投薬管理が必要です。
不整脈そのものを抑制する薬剤で作用のしくみからみると、心筋の興奮や伝導に関与している電解質イオンの働きを直接抑制する薬剤(心筋の電気的興奮をつかさどるナトリウム、カルシウム、カリウム、これら3つの電解質イオンのチャネルをブロックするチャネル遮断薬)です。そのほかに交感神経の興奮を抑えることで、心拍数を減少させたり、心筋の興奮性を抑制するβ遮断薬があります。
◇ナトリウムチャネル遮断薬
心房や心室の心筋に作用するナトリウムチャネルの働きを抑制して、心筋の伝導性を低下させ不整脈を停止させたり、予防したりします。主に発作性心房細動や期外収縮などの治療に用いられます。
◇カルシウム拮抗薬
洞結節や房室結節に作用するカルシウムチャネルの働きをブロックして、電気刺激の発生や伝導を抑制します。とくに心房と心室の接合部にある房室結節での伝導を抑制するので、心房細動の心拍数抑制や発作性上室性頻拍に効果を発揮します。
◇カリウムチャネル遮断薬
心筋のカリウムチャネルに作用し、心筋の不応期(一度興奮した後、次の刺激に反応できるようになるまでの間隔)を長くして不整脈を抑制します。心室頻拍や心房細動、心房粗動の治療に適しています。また、心室頻拍に用いることで心室細動への移行を防ぎます。
◇β遮断薬
運動したときや興奮したときの交感神経の作用を高めるβ受容体の反応性を低下させ興奮を抑えるので、運動時や興奮時に起こりやすい不整脈や心房細動に有効です。また心臓の機能が低下している人でも、状況が許せば使用が推奨されています。
抗凝固薬心房細動になると心臓内に血栓が付着し、その血栓が血流に乗り脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こします。したがって、血液を固まりにくくすることで、血栓をできにくくするために使われます。
降圧薬、心疾患治療薬など:不整脈を起こしやすくする高血圧や心臓のポンプ機能を改善する治療に使われます。
不安薬、睡眠導入剤など:不整脈への不安感や生活リズムの乱れを改善し、症状を軽減するために使われます。
早い不整脈の治療方法です。胸壁の上から強い電流を流し不整脈を止めます。
プログラマーによりペースメーカーの点検を行います。
遅い不整脈の治療です。電池から心臓のなかに留置した線に電気信号を送り込み心臓を動かします。
ペースメーカー指導管理
当院では体の外からペースメーカーの作動状態を点検します。
脈が速くなる不整脈を調べられます。最低2回の点検が必要です。
ペースメーカーから電気信号を右と左の心臓にほぼ同時に送り込み心臓全体の収縮のタイミングを合わします。
この方法で血液の送り出しがよくなります。
命にかかわる早い不整脈の治療です。不整脈が発生したら自動的に心臓の中に強い電流を送り不整脈を停止させます。
当院では体の外からペースメーカーの作動状態、ペースメーカーのリード(心臓の中に留置してある線)、電池の消耗状態などを点検します。
ペースメーカー入れておられる患者には、脈が速くなる不整脈も合併されているかたもおられます。ペースメーカーには頻脈の記録がのこるものもあります。定期的に不整脈の出現頻度も調べます。
ペースメーカーには体を動かすと心拍数を増加させることができるものもあります。患者様の身体活動状態にあわせて心拍数を増加させます。この機能により運動耐容能が改善する場合があります。
このような点検が最低年2回の点検が必要です。当院ではいろいろなペースメーカー装置に対応しております。
突然心停止
まずは予防、そしてもしものときに。
当院でも心肺蘇生法を御指導いたします。
希望の方はお申しください。
心臓が一分間に300回以上もの高頻度で不規則に興奮し、正常な収縮が行えない状態です。その原因は左画像の矢印の様に色々な所に電気が発生するためです。3~4分持続すると、脳に血液が送られず死に至ります。治療としては電気ショックしかありあません。
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直ちに救命処置を行う必要があります。とにかく心臓マッサージをできるだけ早くはじめてください。マッサージの決定は息をしているかどうかです。人工呼吸は必要ありません。次にAEDで電気ショックをかけます。
AEDとは、Automated External Defibrillator(自動体外式除細動器)の略で、電源を入れると音声で操作が指示され、救助者がそれに従って除細動(=傷病者の心臓に電気ショックを与えること)を行う装置です。AEDは自動的に心電図を診断し、電気ショックを与える必要があるかどうか判断しますので、医学的な知識が少ない一般市民でも音声ガイダンスに沿った簡単な操作で救命処置ができます。既に学校・駅・空港・スーパーマーケットなど人が大勢集まる公共の場所で多く設置されており、いざ心停止の傷病者が発生しても迅速に対処ができる環境が整備されています。一般市民がAEDを使用して一次救命処置を行うことができます。
電気ショックをかけるまでの時間が遅れると救命できる確率は減少します。1分でも早く心臓マッサージを開始しさらに電気ショックをかけられるかが問題です。
※AHA心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン2000より引用